●狂った油?
トランス脂肪酸はかつて狂った油と呼ばれていました。
日本でも健康に害を及ぼすということで、注目されてはいますが、海外では使用規制、成分表示の義務化といった動きが広まっている中、日本では規制されていません。
日本人は海外の人に比べてトランス脂肪酸を摂る量が少ないので、一般的な食事をしている人はそこまで問題がないからだそうです。
消費者庁からは情報開示の指針が出されています。
その他にも厚生労働省や農林水産省、内閣府の食品安全委員会など、ネットを検索すればトランス脂肪酸について国のデータや記述は見られますが、日常生活で正直どう付き合えばいいかわからないというのが本音です。
しかし、その一方で都市部の30~49歳の女性のトランス脂肪酸摂取量が1日2g以内という基準値を超えている人が多いことも事実です。
その大半が甘いものやファストフード、スナック菓子などの摂りすぎなのです。
●トランス脂肪酸とは
トランス脂肪酸とは不飽和脂肪酸の一種です。
トランス脂肪酸には工業的に作られる植物由来のものと、動物に由来する天然のものの二つがあります。
植物由来のトランス脂肪酸は植物油のような液体の油をバターのように固めるなど、脱臭処理を行うことで生成される付属的なもので、人工的な油脂です。
このような油脂はバターより安価であることから代替品として多くの加工食品に使われ、マーガリンはもちろん、パン、ケーキ、お菓子などの材料に広く含まれており、こちらは健康被害が危惧されています。
牛や羊の胃の微生物から作られる動物由来のトランス脂肪酸は、牛肉や羊肉、乳製品などにも微量ながら含まれていますが、現在健康被害は確認されていません。
●トランス脂肪酸摂取のリスク
トランス脂肪酸を摂りすぎると血液中の悪玉であるLDLコレステロールがたまりやすくなります。
また血液内皮の細胞を傷つけて血管をもろくさせ、動脈硬化や、冠動脈疾患(心筋梗塞、狭心症等)や、喘息、アレルギー性鼻炎、アトピーなどのアレルギー疾患との関連性も指摘されています。
市販の食パン1枚にも約0.2gのトランス脂肪酸が含まれていますが、それを毎日食べる程度ならそれほど神経質になる必要はありません。
トランス脂肪酸はマーガリンだけでなく、ショートニングやファストスプレッドにも含まれているため、パンやクッキー類など粉物に多く含まれています。
パン、ケーキ、クッキー、アイスクリームなどを多く口にする人は注意が必要です。
また、サラダ油などの植物油や、ファストフード、ファミリーレストランの調理油にも含まれているため、市販のお惣菜やスナック菓子、ファストフードといったものが好きな人も気を配る必要があります。
*1 ビスケット類には、ビスケット、クッキー、クラッカー、パイ、半生ケーキが含まれる。
*2 ケーキ・ペストリー類には、シュークリーム、スポンジケーキ、ドーナツが含まれる。
*3 マヨネーズには、サラダクリーミードレッシング及びマヨネーズタイプが含まれる。
*4 牛肉(内臓)には、心臓、肝臓、はらみ(横隔膜)、ミノ(第一胃)が含まれる。
*5 牛乳等には、普通牛乳、濃厚牛乳、低脂肪牛乳が含まれる。
*6 クリーム類には、クリーム、乳等を主原料とする食品、コーヒー用液状クリーミング、クリー ミングパウダー、植物油脂クリーミング食品が含まれる。
*7 抽出油中 0.05g/100g(定量下限)未満であった。
※出典:内閣府食品安全委員会 https://www.fsc.go.jp/sonota/54kai-factsheets-trans.pdf
●されど脂質!
2005年あたりから日本でトランス脂肪酸が問題になって以来、各メーカーの企業努力により、マーガリン等のトランス脂肪酸は減少し、ハンバーガーチェーンなどのファストフード産業では低トランス脂肪酸オイルを開発するなど業界全体が低トランス化にシフトし始めています。
トランス脂肪酸の量が減っていく一方で、増えているのが飽和脂肪酸だと言われています。
飽和脂肪酸と言えば、中性脂肪やコレステロール値を上げる脂です。
トランス脂肪酸も飽和脂肪酸も元は脂の一種です。
脂質は三大栄養素の一つでもあり、体内で生成できない必須脂肪酸が含まれています。
体内の細胞膜の成分やホルモンの材料などになっていて、不足すると、子どもの発育の障害や、皮ふ炎の原因にもなります。
食べ過ぎれば悪影響が出ますが、トランス脂肪酸を恐れるあまり、脂質の摂取を制限してしまうと、本当に必要な栄養素が取れなくなる恐れがあります。
そちらの方がよほどハイリスクです。
飽和脂肪酸も悪い面ばかりが注目されていますが、不足すると血管がガサガサになり切れやすくなるというデメリットも存在しているのです。
戦後の人は脂質不足で脳卒中にかかっていたといいます。
たかが脂質、されど脂質です。
現在の日本人の食生活では海外に比べてトランス脂肪酸の摂取量は全体的に少ないとはいえ、摂取が多くなりがちな社会環境であると言えます。
上手にセーブしながら日々を健康に過ごしましょう。
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