健康診断での「血糖値高め」は要注意

健康診断での「血糖値高め」は要注意

●健康診断では見つからない!? 早期の糖尿病

初期の糖尿病はほとんど自覚症状がないので、健康診断の血液検査の結果を見て気づくのが一般的です。

ここで気をつけたいのが、糖尿病ではないけれど
「血糖値が高めですよ」
と指摘された人。
糖尿病ではないのでホッとするかもしれませんが、安心してはいけません。
密かに糖尿病が進行しているかもしれないからです。

もし病院で「血糖値が高め」と指摘されたら、医療機関で<食後2時間血糖値>や<HbA1c>値などの詳しい検査を受けることをおすすめします。
一般の健康診断では、<尿糖>や<空腹時血糖値>しか検査しないことが多いので、本当に糖尿病や糖尿病予備軍でないかを確認する必要があるのです。

健康診断では、胃の検査などを同時に行うため、お腹の中を空っぽにして空腹時の血糖値を計るようになっています。
ところが、糖尿病予備軍を発見するのには、空腹時はあまり適していません。
日本人に多いインスリン分泌不全は、食後の血糖上昇に問題があるからです。

インスリン分泌不全の人の場合、食後に血糖値が急上昇しますが、時間が経つとインスリンが効いて血糖値は正常な状態に戻ります。そのため、食後高血糖があっても、健康診断では見つからないケースが多く、〝隠れ糖尿病〟が増えていると心配されています。

■糖尿病の判定基準

●糖尿病型

基準1:空腹時血糖値が126mg/dℓ以上
基準2:ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)で 2時間値200mg/dℓ以上
基準3:随時血糖値が200mg/dℓ以上
基準4: HbA1cが6.5%以上(NGSP) (JDSの基準で6.1%以上)

●正常型

基準5:空腹時血糖値110mg/dℓ未満
基準6:ブドウ糖負荷試験(75gOGTT)で 2時間値が140mg/dℓ未満

●境界型

上記のいずれにも属さない

*1~4のいずれかが確定された場合は、「糖尿病型」と判定されます。ただし1~3の いずれかと4が確認された場合には、糖尿病と診断されます。
*5および6の血糖値が確認された場合には「正常型」と判定されます。
*HbA1cは2012 年 4月からNGSP(国際標準値)が使用されるようになりました 。(それまで使用されていたJDS 値より0.4%ほど高くなっています)

日本糖尿病学会の診断基準では、
空腹時血糖が126mg/dℓ以上で「糖尿病」、
110mg/dℓ未満で「正常」、
この間を「境界型」としています。

境界型とは、ブドウ糖負荷試験で糖尿病型にも正常型にも属さない血糖値の人のことです。
「空腹時高血糖」や「食後高血糖」はここに含まれます。

境界型は病気ではないので、保険適応での治療は受けられません。
とはいえ、そのまま放置しておくと糖尿病を発症するリスクは非常に高くなります。
境界型、いわゆる〝糖尿病予備群〟と診断された場合は、食事などの生活習慣を見直して、血糖値を正常値に戻すようにしましょう。

●食後高血糖タイプは動脈硬化も進みやすい

最近の研究で、食後高血糖タイプは動脈硬化が進行しやすく、心筋梗塞や脳梗塞のリスクが約2倍、認知症のリスクも高いことがわかっています。
血糖値の急激な上昇が血管壁に負担をかけ、動脈硬化を促していると考えられているのです。

動脈硬化を防ぐ意味でも、食後高血糖は早期に発見したいもの。
そのためには、医療機関で食後血糖値を計ってみるのが確実です。
ほかに、市販の尿糖検査器具を活用して自分でチェックする方法もあります。

●一番怖いのは糖尿病の合併症

高血糖状態が長く続くと、全身の毛細血管という細い血管がつまったり、動脈硬化が進んだりします。
初めは全く症状がありませんが、長い間に静かに進行します。

個人差が有りますが、一般に糖尿病になってから10~30年後に困った症状(合併症)がみえはじめ、生活に大きな支障が出てきます。(血糖値の高い人ほど早く合併症が出やすいといわれます)

糖尿病に特有な合併症(細小血管障害)

高血糖のために細い血管(毛細血管)がつまっておこります。
はっきりとした症状が出ずに、糖尿病の合併症が進んでいることが多いので、最低半年に一度は検査を受ける必要があります。

1)糖尿病網膜症:眼底の血管に病変が起こり、ひどくなると失明します。目が見えにくくなった時には、やや手遅れです。初期より定期的に眼科の検査を受けてください。

2)糖尿病腎症:腎臓に障害が起こり、蛋白尿やむくみが出ます。微量蛋白尿→蛋白尿→腎障害→慢性腎不全→むくみ→透析へと進行します。腎機能障害がひどくなると透析が必要です。

3)糖尿病神経障害:全身の神経が障害されますが、一般に足先のしびれ、痛みより始まります。ひどくなると歩行困難になることも。また、糖尿病性壊疽(感染・血流障害などで体の一部が死んでしまうこと)となることがあります。

●早期からの取り組みで 合併症のリスクが低下

糖尿病や糖尿病予備群と診断された場合には、まず毎日の食事を見直しましょう。
適度な運動も必要ですが、激しい運動は血糖値を悪化させることがあるので、すでに糖尿と言われている人は医師への相談が必要です。

糖尿病の合併症は、糖尿病である期間が長くなるほど、発症率が高くなります。
そのため、血糖値をいかに早期に下げられるかが重要。近年、さまざまな研究から、生活習慣を改善するだけでかなり血糖値が下がることがわかっています。

血糖値をコントロールすることができれば、重篤な合併症に悩まされたり、命が脅かされたりすることはありません。
糖尿病と診断された人はもちろん、糖尿病予備群と指摘された人も、合併症を進行させないためにできるだけ早くから血糖値を下げる生活を心がけましょう。毎日の積み重ねが大切です。

●インスリン分泌不全は、食後の血糖上昇に問題あり。一般の健康診断ではわからないことも。
●医療機関で「食後血糖値」を計ってみるのがおすすめ。
●毎日の食事の見直しで改善できる部分が大きい。

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