<更年期と上手につきあう3> 更年期乗り越え術

<更年期と上手につきあう3>  更年期乗り越え術

1.プラセンタ療法 ●更年期の不快症状を改善

プラセンタ療法とは、胎盤から抽出されたエキスの有効成分を治療に使用する療法。
加熱滅菌処理したヒト由来の胎盤を皮下に埋め込む「胎盤埋没療法」と、ヒト由来の「プラセンタ注射薬(ラエンネック・メルスモン)」を使用する方法の2種類があります。
胎盤埋没療法よりも、簡単で安全にできる注射剤を使用する治療が一般的です。

ヒト由来のプラセンタ注射薬は、肝機能障害や更年期障害の治療薬として厚生労働省から認可されている薬です。
病気の治療以外にも、疲労の回復や自己免疫疾患・アレルギー疾患の改善、美肌・エイジングケアなどの美容効果が期待できるため、広く活用されています。

プラセンタ注射のポイントは副作用の心配がほとんどないところ。
効果はマイルドですが、定期的に注射することで更年期の不快症状が改善されます。

プラセンタ注射のデメリットを挙げるとすれば、厚生労働省の指導により胎盤エキス(プラセンタ)を注射した人は、献血ができなくなってしまう点です。

理由としては、「変異型クロイツフェルト・ヤコブ病」等の伝播のリスクを完全に否定することはできないため。
ヤコブ病感染の危険性は、非常に低いのですが、完全には感染が否定できないという点を重視したようです。

プラセンタ注射は発売開始以来現在までに(メルスモン: 1956年発売開始、ラエンネック:1974年発売開始)、投与によるB型肝炎、C型肝炎、エイズ、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病等などの感染症の報告は一切ありません。

もちろん献血に協力できないだけで、輸血を受けることはできます。

2.ホルモン補充療法 ●更年期の症状緩和にエイジングケアも

HRT(ホルモン補充療法)とは「Hormone Replacement Therapy」の略で、女性ホルモンを薬剤によって補う療法です。
更年期に激減するエストロゲンを少量補って心身の症状を緩和させる治療法で、飲み薬や貼り薬、塗り薬などがあります。

HRTは、汗やほてり、イライラなどに即効性があり、更年期のうつにも効果的とか。また、骨粗鬆症の予防、脳の働きを改善する、コラーゲンの再生を促すなど、健康サポート効果や美容効果も期待されます。

HRTは、婦人科での問診や血液検査の結果、ホルモン値が低く、補充して改善が認められる場合は保険適用となります。ただし、乳がんや子宮体がんなどにかかったことがある人は受けられません。
事前に検査を受け、がんがないことを確認した後に治療を開始します。

HRTを行うタイミングは閉経後2年以内がベター。閉経前は多少女性ホルモンが残っているため、ホルモン量を調節して使うこともあります。
60代以降はかえって動脈硬化のリスクを高める可能性があり、おすすめできません。

欧米ではポピュラーな治療法ですが、日本は普及がとても遅れているそう。以前、国内で「HRTを続けていると乳がんになる」という報道がされたことがありますが、現在では5年以内の使用では乳がんの増加は認められていないそうです。

3.漢方薬 ●更年期独特の「不定愁訴」は漢方薬の得意分野

倦怠感や疲労感、冷えなど、更年期の症状には病気ともいえない「不定愁訴」が多くあり、一人の人が複数の症状を訴えることが多くあります。
こうした場合の強い味方になってくれるのが「漢方」です。

漢方薬の特徴は、自然界の植物や鉱物などの有効成分である生薬が複数配合されているため、一つでも複数の症状に効果があるということ。また、一人ひとりの症状や体質で薬を選べるので、きめ細かい対応も可能です。

基本的には閉経前の人に向いているとされ、HRTとの併用も可能なのでまずは医師に相談してみてはいかがでしょう。
健康保険が使えますが漢方専門などの医療機関では保険がきかないこともあります。あらかじめ確認しておくと安心です。

婦人科の三大漢方薬

■当帰芍薬散(とうきしゃくやくさん)
冷えに対する漢方薬の中では代表的な存在。芍薬(シャクヤク)で血を補い、当帰(トウキ)で暖めて巡らせます。
弱った体をいたわりながら優しく効いてくるタイプの生薬で構成されているので、比較的体力がなく、冷え性の人におすすめです。

■加味逍遥散(かみしょうようさん)
さまざまな症状に効く、更年期の代表的な漢方薬です。
入っている生薬の種類が多いのが特徴で、自律神経に働きかけてホルモンバランスを整え、穏やかに作用しながら女性の体調不良を緩和する万人向けの漢方。服用して様子を見てから治療の方向性を決めるという用法もできます。

■桂枝茯苓丸(けいしぶくりょうがん)
瘀血(血が滞ること)の症状に用いられる漢方。牡丹皮(ボタンピ)と桃仁(トウニン)が含まれていて、わりとはっきりとした症状改善がみられるとされます。血流が悪くなるタイプの肩こりにも効果的です。

4.生活習慣 ●ライフスタイルを見直すきっかけに

女性ホルモンの減少は、生活習慣を見直し体調を整えることでカバーでき、更年期の症状もコントロールできる場合があります。

例えば、大豆製品を意識してとる、習慣的に運動をする、睡眠時間を確保するなど、食事、運動、睡眠の3つのポイントから生活習慣を見直してみましょう。更年期以降リスクが高まる生活習慣病の予防にもなります。

また、更年期世代はまだ若いと思っていますが、体内では老化が進行中。これまでのようにただ頑張るのではなく、思い切ってペースダウンすることも症状保予防、改善に繋がることもあります。

閉経後の女性の人生は平均寿命から見ると約30年以上あります。歳をとることで失うことに意識が向きがちですが、更年期をセカンドステージの入り口と捉え、新しいことにチャレンジするなど、今後の人生や将来について考えるきっかけにしたいものです。

ポイントにしたい3つの生活習慣

食事:大豆製品などをバランスよく
大豆には女性ホルモンに似た働きをする大豆イソフラボンが含まれています。牛乳、青魚、野菜類なども積極的に食べましょう。

運動:血流をよくし、ストレス解消効果も
適度な運動は血液循環をよくし、更年期の症状の緩和に役立ちます。骨粗鬆症の予防や筋力強化、ストレス解消効果も。おすすめはウォーキングや水中エクササイズなどの強度の低い有酸素運動です。

睡眠:十分な睡眠時間で体力をキープ
体力が低下してくる年代なので、意識的に睡眠や休息の時間を確保しましょう。午前中の光を浴びたり、睡眠前に入浴したりするとよく眠れるようになります。

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