毎年ニュースで報道されるインフルエンザワクチンをはじめ、大人になってからも必要な予防接種があります。
どんな予防接種があるか、効果が切れているものはないか、まず情報を得るところから始めましょう。
高齢者や慢性疾患をもっている人は、積極的に受けて
予防接種というと、「子どもが受けるもの」「昔受けたから大丈夫」と思っていませんか?
予防接種とは、命にかかわったり、重大な後遺症を残したりする可能性がある病気を予防するためのものです。まだ免疫力がしっかり備わっていない乳児や子どもが受けるのは当然ですが、近年注目されているのは、感染症にかかることで、大人が重症化したり、高齢者では死亡するケースも見られることです。
例えば、毎年流行するインフルエンザをみると、死亡者数は65歳以上のシニア層が圧倒的に多いとのこと。
また、インフルエンザや風邪などから併発しやすい肺炎での死亡率は年々上がっており、厚生労働省の調べによると2017年では、日本人の死因の第3位となっています。
もちろん、予防接種を受けたから100%安心ということではありません。でも、大人でも自分の身を守るために、受けられる予防接種があることを知っておきましょう。
まわりの人にうつさないためにも、「かからない」「こじらせない」に気をつけ、予防することが大事です。
●主な感染症
■麻疹
高熱が1週間以上続き、のどに強い痛みがあり、その後、全身に発疹ができます。症状が強いときは入院を要することもあります。
■風疹
発疹、発熱、リンパ節の痛みがあります。軽い場合は気づかずに治ることもありますが、大人の場合は重症化しやすいので注意。妊婦がかかると胎児に感染し、先天性風疹症候群の赤ちゃんが生まれる可能性が高いため、社会全体で予防する必要があります。
■流行性耳下腺炎
おたふく風邪のこと。片側または両側の耳の近くが腫れ、痛みがあります。1週間ぐらいで治りますが、思春期以降にかかると重症化することも。また、難聴や膵すい炎えんといった重篤な合併症もみられます。
■水痘
1〜2日の発熱のあと、発疹(赤いブツブツ)ができ、水ほうとなってつぶれます。大人の場合、肺炎や脳炎、肝炎などを併発して重症化することもあります。
■結核
ワクチンが行き渡ることで減少し続けていましたが、90 年代から再び増加。子ども時代にBCGワクチンを受けていても、高齢になるとかかりやすく、死亡の原因になることもあります。初期はせきや痰たんなど風邪に似た症状が出ます。
■日本脳炎
数日間の高熱が続き、その後、意識障害や神経系障害が現れ、パーキンソン病様症状、まひ、精神障害などが残ることもあります。子どもは重度の障害を残すことが多く、乳幼児と高齢者では死亡率が高くなります。
■破傷風
土壌に常在している破傷風菌が傷口などから体内に入り、毒素を作ります。口周辺の障害などから始まり、末期には呼吸筋のまひによる窒息死もみられます。近年、患者数が増加傾向にあるとされています。
●子ども時代に獲得した免疫は切れている可能性も!
現在は30〜50代の男性を中心に風疹にかかる人が急増しています。こうした感染症の流行の再発は、ある特定の期間、予防接種が廃止されたことが原因です。
麻疹や風疹も含め、子ども時代に予防接種を受けていないものがあるかもしれません。その病気にかかったことがないと、免疫を獲得できていないので、今からでも予防接種を受けておきましょう。
年を重ねるにつれて抵抗力は落ちるので、その病気が流行るとかかりやすく、重症化しやすくなってしまうからです。
また、子どものころ予防接種で得た免疫は、年数がたつにつれて効力が落ちていき、完全になくなっている場合もあります。
免疫のなくなり方には個人差があり、どのワクチンの効力が切れているかはわかりません。
その病気が流行しだしたら、念のために予防接種を受けておくのもいいでしょう。
●毎年受けたいインフルエンザの予防接種
毎年、12〜3月がインフルエンザの流行シーズンです。風邪もインフルエンザと同様、ウイルスによる感染症で冬場に流行りますが、違いは、圧倒的にインフルエンザのほうが重症になりやすいこと。
また、インフルエンザが完治するには5〜6日かかるため、会社や学校を休む必要があるため、家族やまわりの人にうつさないよう注意を払わなければなりません。
そこで、毎年9〜10月から、その年に流行すると予測される型のワクチンの接種が開始されます。
インフルエンザウイルスの中で、日本で流行するものは、A(H1N1)亜型、A(H3N2)亜型(いわゆる香港型)、B型の3種類です。
この3種類がどの比率で流行するかは、その年によって違うので、毎年、世界保健機関「WHO」の予測に基づき、日本では4〜5月にワクチンを生成しています。
なぜ、毎年受ける必要があるの?
そもそも、インフルエンザワクチンの効力は、約5カ月間しかありません。ですので、流行が終わると同時に、免疫も消えてしまいます。また、毎年、流行するインフルエンザの型が違うので、日本の場合、その年の冬に向けて流行すると予測された型のワクチンを4〜5月ごろに作っています。
型が違っても効果がある?
インフルエンザワクチンは、健康な人で型がしっかり合致した場合でも、予防率は70%といわれています。型が合致しない場合も含めると、予防率は50%くらいとも。つまり、インフルエンザの予防接種は、かからなくするためというより、かかっても重症化しないために受けるものなのです。
いつごろ受ければいいの?
インフルエンザワクチンは接種後、2週間程度から効力を発揮し、およそ5カ月間持続します。予防の基本は、流行前に接種すること。流行シーズンの前(12 月上旬)までには受けるようにしましょう。
●自分でできる感染症予防の基本
<手洗い>
インフルエンザや肺炎、風邪といった感染症を防ぐのに、一番重要なのは、手洗いです。「予防接種を受けたから安心」などと油断せず、外から帰ったら、「真っ先に手を洗う習慣」をつけましょう。
また、インフルエンザなどのウイルスは、せきやくしゃみで体外に飛び散り、手指や物を汚染します。電車のつり革やエスカレーターの手すり、オフィスのドアノブなど、どこでウイルスに接触するかわかりません。家の中に、そのウイルスを持ち込まないことが大切です。
<うがい>
手洗いと一緒に習慣づけたいのが「うがい」です。インフルエンザなどのウイルスがのどの粘膜に付着すると、細胞の中に取り込まれます。うがいは、その付着しているウイルスを除去するのに効果があるといわれています。
うがいをするときは、まず口に水をふくみ、口を閉じてブクブクして吐き出します。次に、水をふくんで上を向き、口をあけてのどの奥まで洗います。これを3回ぐらい繰り返しましょう。特にうがい薬を使わない「水うがい」でも、効果があります。
<睡眠、栄養、マスクの着用など>
インフルエンザや肺炎などの感染症は、体力が落ちているときにかかりやすくなります。
流行前から、睡眠や休養をよくとって疲れをためないようにし、食事は栄養バランスに気を配って体力をつけておきましょう。また、外や人ごみに出るときはマスクをすると、のどを乾いた空気から守り、飛沫感染を防ぐことができます。
<かかってしまったら広げない>
インフルエンザなどにかかったら、人にうつさないことが大事です。インフルエンザウイルスの感染力は強いので、ウイルスの透過性が低いマスクを着用しましょう。