プラセンタでペットの心と体の健康を守る
最近は医療機関で漢方薬を処方することもあり、比較的身近になってきた漢方ですが、実はペットたちにも治療や養生として使用されています。とはいえ、まだまだ一般に知られているとは言えないのが現状。今回はペットの医療に中医学(東洋医学)を取り入れ、特にプラセンタ治療を率先して行なっている「アニマルリハクリニックかつき」の畦元香月先生に、ペットの健康とプラセンタの効果についてうかがいました。
獣医師/中医学アドバイザー 畦元 香月先生
日本獣医動物行動研究会、日本動物リハビリテーション学会、比較統合医療学会所属。中学生の時に飼っていた犬が病気になり、獣医師になることを決意。獣医大学卒業後は動物病院に勤務するが一度、動物病院を離れ医療用画像ソフト開発の企業に転職。CT、MRIを読影するソフトウェアに携わり、国内の病院や動物病院だけでなくアメリカ国立衛生研究所やハーバード大学等とも関わり、北米放射線学会(RSNA)にも出展。その後、動物病院に復帰し2015年開業、日野市を中心にペットの訪問診療を行う。著書:『わんこごはん』マチペッタ書房/『犬の健康とボディケア』マチペッタ書房/『ペットの漢方薬』
中医学アドバイザー/ホリスティックケアカウンセラ―/アロマテラピスト/薬膳漢方マイスター/心理カウンセラースペシャリスト/整体&セラピースペシャリスト/リンパ&セラピースペシャリストなどを取得。
病気だけでなく、全身に広くアプローチ
■先生が取り入れているペットの中医学とはどのようなものでしょうか。
「中医学」は、中国薬学の理論と臨床経験に基づいて行われる中国伝統医学です。日本の漢方の源流であり、鍼灸治療のベースにもなっているものです。
中医学では、活力や新陳代謝の力などのエネルギーを意味する「気(き)」、全身に栄養を運ぶ「血(けつ)」、体にとって必要な水分「津液(しんえき)」の3つバランスを整えることが重要と考えられています。
そして、この3つの要素に関わっているのが、心・脾・肝・腎・肺の5つの内蔵「五臓」です。
健康な状態では『気・血・水』と『五臓』は、それぞれお互いに助けたり抑制しながら一定のバランスのもとで働いています。体が不調や病気へと傾くのは、そのバランスが崩れたときです。
バランスを崩してしまう原因には、生活習慣の乱れや運動不足、ストレスのほか、老化や気候の変化などが挙げられます。人間と同じ生活環境や生活習慣で暮らす現代社会のペットですが、バランスが崩れることで人間と同じような病気や体調不良が増えてきています。
西洋医学が病気にピンポイントで働きかけるものだとすれば、中医学は体だけでなく心も含めた全身に広くアプローチしていくイメージ。
体のバランスを正しい状態へ導くために、漢方薬や鍼灸、整体など、体全体を診ながら、中医学を取り入れた治療していきます。
なんとなく元気がない、食欲がない、問題行動を起こしてしまうなど、慢性的に続く症状を改善する場合は、中医学の考えがペットの体にやさしく、自然な治療法だと考えています。
プラセンタが関わりのある部分は「金=肺」
また、中医学では古代中国の思想「五行説」に五臓を当てはめて相関を考えていきます。
例えば「木=肝」が強くなりすぎると、イライラ、落ち込み・情緒不安など精神面に影響が出やすくなります。
こうした場合は、気持ちを落ち着ける、鎮静させるような処方が必要です。
プラセンタ(漢方名では紫河車)が関わりのある部分は「金=肺」。
肺は水分を全身に行き渡らせる水道調節作用と関わっているため、肌の潤いや、発汗も肺の働きが一役買っています。
美容面でプラセンタの効果が期待される部分ですね。
また、肺は余分な水分を腎臓に送ることで体外に排出させる働きもあります。
そのため「金」が弱まると皮膚が乾燥してカサカサになったり、運動しても汗が出にくかったり、身体のむくみにもつながります。
皮膚病やアトピーなど皮膚のトラブルを起こしやすいペットはこの「金」が弱っている可能性があります。
「金」が弱くなると、相関作用で「水」がさらに弱ってしまう。「水」は「腎」なのでホルモンや泌尿器関係につながってきます。
ホルモンバランスが崩れると自律神経に影響を与え、胃腸も悪くなってしまう。そんな風にすべてつながっています。
まずは体質チェックで、どこがいちばん弱っているか見極め、その子に適した治療法を選択していきます。
“食欲不振はプラセンタ”で改善
■プラセンタの効果を特に感じた事例はありますか。
病気として診断されず、未病(原因不明だけれど、身体に不調を感じる状態)による食欲不振の症状のみが出ている7歳以上のシニア犬6頭に、プラセンタのサプリメントを与えたことがあります。
6頭中、5頭は1、2回プラセンタを与えただけで食欲が改善されました。
あまり変化のなかった1頭はそれほど重篤な状態ではなかったというのもあるかもしれませんが、特に夏バテなどでぐったりとして、水も飲めないという状態の時にプラセンタを与えると、飼い主さんがびっくりするほど食欲が戻りますね。
老化で胃腸の機能が衰えて食欲がなく、ホルモンバランスも崩れがち。
中医学では「腎陰虚」と呼ばれる症状ですが、そんなワンちゃん、ネコちゃんには、まず最初の処方としてプラセンタサプリを与えます。
一度試すだけで効果が実感できるようで、私の周りの飼い主さんたちには
“食欲不振にはプラセンタ”
が浸透してきました。
動物の「健康になろうとするチカラ」を助ける
■食欲が出ると、全身的に元気になりますよね。
そうですね。どんな治療を施したとしても、しっかり食事ができて自分で栄養を取り込むことができなければ、体はどんどん弱ってしまいます。
以前治療したワンちゃんですが、17歳のパピヨンでプラセンタを与えていたおかげで、最後まで寝たきりにならずに元気でいたと感謝されたことがあります。
私のところへきたのは、高齢のため食欲も落ち、痩せて触ると骨と皮だけのような状態でした。とにかく寝たきりにならないようにとプラセンタや漢方を中心に治療を進め、食欲を戻すことを第一に考えました。
ほどなくして食欲が戻り、元気に動き回れるようになりました。
歩くのもやっとだった状態から、クッションやぬいぐるみを台にしてソファーの上に登れるようにまでなったとのこと。プラセンタの効能をいちばん感じた子でしたね。
食欲が出たことで、結果として体重が戻り筋肉量が増えて元気になったということかもしれません。
プラセンタが直接筋肉に作用するわけではありませんが、体全体の機能を向上させ、ペットの健康になろうとするチカラを助ける全身作用に一役買っているのは間違いないと思います。
プラセンタで効果が期待できることとして、主に下記のことが挙げられます。
・アレルギーやアトピー症状の緩和
・体力の向上
・問題行動の緩和(ストレスの軽減)
・毛艶や脱毛の改善
ペットと1日でも長く楽しい時間を過ごすために
診察していて思うことは、特に最近ストレスを抱えている動物が多いということ。
その原因の多くは飼い主さんにあります。例えば「うちの子これしか食べないのよ」といいう思い込みで食事を与えていたり…。診察で、ああこの子はきっとそう思っていないだろうなと感じることもあります。それでも飼い主さんの思いを押し付け続けてしまうと、ストレスで胃腸が弱って軟便にもなりやすいし、血便にもなりやすい傾向があります。
マッサージをしてリラックスさせてあげたり、鍼灸やプラセンタで自律神経を整えたり、考え方は人間と全く同じです。
ペットの平均寿命は飛躍的に延びてきています。でも老化は止めることはできません。
長くなったとはいえ、人間に比べれば犬や猫の寿命は短く、成長も老化も私たちが想像する以上のスピードで進みます。
一日でも長く楽しい時間を一緒に過ごすために、ペットたちの心と体の健康を保つことが肝心です。
私たち人間と異なりペットは自分で生活環境や生活習慣を選べません。
食べ物を選ぶのも、散歩に行くのも、動物病院へかかるのも、すべては飼い主さん次第。
体のバランスを整えて養生を補助し、できることなら病気を未然に防ぎ、ペットたちの健康寿命を伸ばしてあげましょう。
プラセンタEQリキッド(日本生物製剤)
*動物病院専用サプリメント
「プラセンタEQパウダー」は毎食1カプセル。「プラセンタEQリキッド」は3日連続1日1本(体重10kg以上の場合は1日2本)が与える目安。
「アニマルリハクリニックかつき」が提携するショップでも購入できます。
取材の様子
(取材/インタビュー コピーライター:下川原和代)
アニマルリハクリニックかつき(完全予約制)
獣医師 畦元香月
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取材協力:日本生物製剤