ソウル発!「美容医療」の今 vol.3
ヒトや動物の胎盤から抽出されたエキスの有効成分を、注射や内服などにより体内に取り込む治療の総称を「プラセンタ療法」といいます。保健医療では肝機能改善、更年期障害の症状改善などでしか使えませんが、今では美容をはじめ、疲労回復、二日酔い、目覚めが悪い、生理不順、冷え症、元気が出るなどの効果を期待して使用する人が増えています。今回は、医学博士で韓国のプラセンタ療法の権威ともいわれるキム ドンファン先生に、美容大国・韓国におけるプラセンタの位置づけと役割、美とプラセンタの関係についてうかがいました。
金 東煥 (キム ドンファン先生)
医学博士(韓国全北大学校医学大学博士卒)、韓国全北大学校病院神経外科修了、米国 Loma Linda大学神経外科短期研修 (Movement Disorder)、米国 Ohio Cleveland Clinic神経外科短期研修、前.韓国東國大学校仏教大学院ヨガ融合学科外来教授、現.韓国栄養医学会会長、大韓静注医学会総務副会長、大韓抗老化学会理事、大韓バランス医学会副会長、(社)韓国ヨガ連合会教育副会長、韓国圓光デジタル大学Well-Being大学院外来教授、 (株)THE ENC代表理事
<著 書>
「Personalized Nutritional Therapy」(ハンソル医学書籍)
「癌に勝てる知識と治療法」(Nexus Book)
韓国でも滋養漢方薬として古くから使用。
今後のさらなる研究開発に期待
■まず初めに韓国でのプラセンタの位置づけについて教えてください。
プラセンタは滋養漢方薬として漢方針用法と共に古くから使われてきました。漢方として長い間活用されてきた歴史がありますから、一般的な知識として“良いもの”という認識はされています。昔は漢方剤市場で乾燥した胎盤を1胎盤あたり600円ぐらいで売っている時代もあったんですよ。今はもちろんありませんが(笑)。
ただ、胎盤という生物由来であるがゆえに安全性や危険性に対する先入観が並行し、メディアや政府からはネガティブな姿勢で取り扱われることもありました。
そのせいもあり、現在は残念なことに医薬品注射剤としてのプラセンタは、行政的規制によって使用法や市場が限られてしまっています。
その一方で、プラセンタ原料を使った健康機能食品やドリンク剤、化粧品などありとあらゆるプラセンタ商品が市場に溢れ出しています。
つまり、プラセンタは健康や美容効果が高い商品として広く認知されているということですね。
プラセンタ市場は活気がありますが、皮肉にも医療的に使われるもっとも安全なプラセンタ処方にばかり制限がかかり、本当に残念に思います。
希望として今後研究や使い方などが開発され、多様な分野でプラセンタが使われるようになってほしいですね。
韓国でもっとも多く使われているのは「Laennec(ラエンネック)」
■医療用プラセンタ注射剤は主にどのように使用されているのでしょうか。
韓国で注射剤としてもっとも多く使われているのが、2005年、Green Crossと日本生物製剤の合併会社として設立したGCWB社で生産されているラエンネックです。他には同じく日本生物製剤の「キュラセン*」やメルスモン社の「メルスモン」が良質なものとして認識があり、目的や値段によって使い分けられています。
キュラセンとメルスモンは美容目的が多く、ラエンネックは肝機能改善のほか、免疫疾患治療、アトピーの治療などにもよく使われています。
また、プラセンタは「痛み」にも効果的です。
痛みという概念は肉体的、精神的、化学反応(ケミカル)的トラブルが総合的に表れる複雑な作用ですが、この複雑な作用すべてにおいてプラセンタは効果を表しています。
痛みが慢性的に生じるということは、体の構造がしっかり回復されていない状態を示します。その回復されていない所に栄養を与える役割をしてくれるのがプラセンタ。現在行われているさまざまな治療法にプラセンタ療法をプラスすることでさらなる治療効果が期待できると私は考えています。
*JBPキュラセン=海外向け製品です。
写真はイメージです。
美容ではラエンネックとキュラセンを施術によって使い分け
■美容分野では具体的にどのような使い方をしているか教えてください。
いろいろな製薬会社のプラセンタ注射剤を使ってみたのですが、私の場合、安全性や工程面から現在はラエンネックとキュラセンに絞っています。
どちらもヒト由来のプラセンタエキスですが、違いはラエンネックが高分子なのに対しキュラセンは低分子であること。それぞれ製造工程が異なり、また肌のタイプによって痛みや副作用の現れが違うので、患者さんに合わせて処方しています。
例えば、キュラセンは粘度が薄くハレやむくみなどの副作用がないという点で、メソテラピーや皮下注射など皮膚の浅い層に限って使っています。
その他広範囲的には主にラエンネックを使います。効果面などからラエンネックの方を優先的に考えますが、ハレや赤みなどが気になる場合はキュラセンを勧めていますね。
私は栄養医学の専門家としてもプラセンタの使用法、今後の発展に関してさまざまな活動をしています。
最近の研究の一つを挙げると、現代医学では、問題になった特定の疾患や病気をピンポイントで狙い、直接作用する薬を与え治療を行うメカニズムになっています。
プラセンタはこのような「薬」としての機能よりも、抗酸化、抗炎症、再生の効果などによってよりナチュラルに体を回復させるという方向で研究、開発を進めています。
名付けて『Placenta Nutrition Therapy』。
個人の体調に合わせてアミノ酸やミネラル、ビタミン等さまざまな有効成分をプラセンタと配合し、注射する“カクテル注射”処方などを研究、開発しています。
日本生物製剤(JBP)では、プラセンタ注射剤以外に健康食品や化粧品など多様なプラセンタ商品を扱っていますが、それぞれの商品を他会社の商品またはプラセンタに含まれてない栄養素などと組み合わせることでプラセンタの可能性がさらに見出されるのではないかと思いますね。
10年後、20年後に、美容の差がはっきり出る
■先生がお考えになる美とプラセンタの関係についてお話しください。
「ご自分の肌の年齢はおいくつかわかりますか?」
そう質問すると皆さん、ギョッとした顔をされますね(笑)。肌年齢は加齢と繋がるイメージが強いのですが、実は肌の細胞は28日周期でターンオーバーし、再生し続けるので皮膚年齢は28日までなんですよ。
新しく再生する細胞を、より健康な細胞として生産させることが今後の美容医療の進むべき方向であり、最先端の技術として注目されています。
現在、細胞をよりよく再生させるための数多くの材料や技術が研究されていますが、私の考えでは、その中でいちばんはプラセンタです。
そこで、皆さんが今すぐにでもできることとして、
体に疲れを感じたときには疲労が体内に蓄積する前に、専門医を訪ねプラセンタ注射で補ってください。ちなみに、現在商品化されたプラセンタ商品の中ではラエンネックが最も効果のある商品だと思います。
そして日頃からプラセンタエキスの入った化粧品を使って、肌も癒すことをおすすめします。化粧品の効果はすぐには実感できないかもしれませんが、10年、20年後にコツコツとプラセンタを使ってきた効果をはっきり実感できると思いますよ。
韓国は美容整形大国とも言われていますが、ボトックスやプチ整形などで美容を追及するより、日頃のお手入れで美しさを磨いた方の方がナチュラルでキレイだなと個人的には思います。
私は、良質なプラセンタをいろいろなシーンで人の美容や健康に役立てる研究と、その教育を行っています。もっと多くのドクターがプラセンタのことを深く知り、プラセンタの恵みを多くの人に届けてもらえればと思っています。
取材の様子
(取材/インタビュー コピーライター:下川原和代)
取材協力:日本生物製剤